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TPPと農業政策

 TPP(環太平洋パートナーシップ協定)への参加を「平成の開国」だとして当初菅首相はコブシをふりあげていましたが、根強い反対論を前にトーンダウン気味ではあります。ちなみに、賛否以前にこの種の問題は避けて通ることができないと冷静に判断するべきものです。日本が内外に「反グローバリズムを国是とする」と表明するなら別ですが・・・。

 さて、反対論の中心には農業問題が絡んでいることは周知の事実。試算によれば仮に参加した場合、農業生産額は半減するとのことです。むろんこの試算はなんら政策的な手当てをしない場合でしょうから、今後農業政策にいかに厚みをもたせるかが問われていることはいうまでもありません。

 しかし、戸別所得補償の規模加算なんぞが予算化されるのですから馬鹿げています。制度設計じたいが間違っているものに屋上屋を架すなど耐震構造に問題があるビルをわざわざ建て増しするようなものです。

 所得補償に加えて、ここぞとばかりに公共事業を増やし、既存の農業予算を積み増して、TPP緊急対策なんぞと銘打たれたら暗澹たる面持ちになりそうですが、どうやらその可能性は大でしょう。

 だいたい、金がないのなら予算をかけずに効果をあげる政策を打ち出せばいいのです。農業をやめようとしている、もしくはそもそもやっていない人にお金をばらまくのがなんで農業政策というのでしょうか。ムダ金をつぎ込んで農業を衰退させるなんぞ、壮大なゼロどころかマイナスです。

 じゃあ、さほど金のかからない方法とはなんなのか。まず政策の対象となる農家を専業農家と非専業農家に差別化することです。ついで非専業農家を主業農家など現在の農水省のカテゴリーで分け、農業収入の比重が大きい農家(規模ではなく)から対象の優先順位をつけるのです。要は政策対象を絞り込むわけです。あわせて認定農業者制度は廃止するのがいいでしょう。(認定農業者となるには一応経営計画を提出するのですが、そもそも制度融資や補助金を受けるならその際にきちんと計画を出させ審査すれば済むことですし、政策対象を絞り込めばこの制度の意味もなくなります)

 二つめは、意欲ある専業農家が農地拡大をめざすうえでそのインセンティブとなりうる制度改正です。例えば、所有者が過去3年以上農地の50%以上を耕作していない場合は、宅地並みの固定資産税を設定することや(例えば広い畑の片隅でちょこっとサツマイモを植えているだけで農業をやってますなどというのは認めないということです)、農地を相続する場合、現行では相続するものが農業を営む場合相続税が猶予(事実上の免除)されますが、この規定を厳格化し、相続を受けるものがその農地の50%以上を耕作する場合に限定するといったものです。また、現行では農業委員会を通さない農地の貸借は無効とされていますが、実態は口約束での貸借がかなりありますから、農地を借りているものがきちんと耕作している場合、借地借家法と同様に借地権が発生することにすれば、実際に農業を営んでいる農家の権利が守られることになります。さらに、耕作放棄地をこれ以上増やさないために、向こう10年間すべての農地の転用を禁止する措置をとる必要もあります。要は10年の間農業委員会で転用の可否じたいの審議をしないということです。参入規制を緩和し新規就農をより容易にする一方で転用規制は徹底強化し、「農地を転用したら高く売れる」からとりあえず所有しておこうという所有者のインセンティブを排除し、農地を農地として売却、貸借する方向に誘導するのです。

 これらの制度改正にはさほどお金はかかりません。いくら事務費がかかったとしても戸別所得補償の8000億にはるかとどかないでしょう。しかし、こうした制度改正のほうがおよそ政策とさえいえないバラマキよりもよほど農業の振興にはプラスになるはずです。

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