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自然農法-福岡正信氏の場合

 自然農法、無農薬栽培などといった場合、農家の方のリアクションはおおむね「そんなの無理だ」「それでは生活できない」といったものです。もちろん個人で有機JAS認定を受けた方や、無農薬を実践されている方も、少ないですがいらっしゃらないわけではありません。

 ただ、この種の農法に到達するためには5年10年といったスパンでも短いということでしょう。事実、自然農法の実践者として令名つと高い故福岡正信氏の場合も、自ら名づけた自然農法は、数十年にわたる試行錯誤が生んだ成果といえます。同じことをすべからく農業を営むものにできるわけがありません。というのは一つは誰しも生活がかかっているということ、もう一つは、福岡氏が共感を呼んだのは、多くの著書で述べられている自然と向き合う哲学にあることは言を待ちませんが、それ以前に氏は農業者として相当高い知識、技術水準をお持ちであったことです。それにあやかるなど、草野球の補欠にイチローのバッティングを求めるようなものです。

 さて、福岡氏に「無」と題する著作があります。これは「宗教編」「哲学編」「実践編」の三冊から構成されていますが、世評高い「わら一本の革命」とともによく読まれているようです。ちなみに実際に農業を営む者としては、高尚な宗教、哲学の話はともあれ、それがいかなる実践に裏打ちされているのか興味深いところです。

 そこで「実践編」を読み進めていくと、「麦作には元肥として石灰窒素を10アール当たり80キログラム施せば、除草対策を兼ね便利である」との一文がありました。福岡氏の説く自然農法の要諦は「不耕起」「無肥料」「無農薬」「無除草」のはずなのにです。また、「野菜の種類と耐病虫性」という項では、スイカ、キュウリ、トマト、ナスは「農薬を必要とするもの」と明記されています。氏は「やむをえない場合」に「最小限度の農薬使用」は否定なさっておられないのです。氏の示す「農薬」の多くは有機JASに適合するものなのですが、先に示した石灰窒素は該当しませんし、農薬としてはやむをえない場合に当たるにせよ、無肥料(石灰窒素はその名のとおり窒素肥料でもあります)、無除草に抵触してしまいます。

 だからといって、福岡氏の主張がまやかしだと断じるつもりはありません。おそらく自然「農法」が可能となるまでの試行錯誤の過程でそれこそあらゆる試行があったのでしょうし、自著で化学物質の使用を正直に認められているのですから、それも含めて評価すればいいことだからです。

 そもそも農耕は自然を破壊することで成り立つのですから、「自然農法」とは、それじたいが自然では決してなく、破壊を最小限に抑えるための営為だと割り切ってしまったとき、福岡氏の農法が技術論としていまだ光彩を放っていることに気づかされるのです。

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