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中選挙区の遺産

 政治学者の佐々木毅氏は、日経のインタビュー記事(4月7日付、「政治の不全を問う・1」)で、「政党自身が所属議員を含めてマネジメントが全然できていない」「政策などの内容を詰めてマネジメントする能力は未熟」と指摘しています。

 おそらく、当面する政策課題に党内の意思統一がままならない与野党の状況にいらだちを感じておられるのでしょう。21世紀臨調の主要メンバーとして「提言」してきたのに、政党や政治家は「なにをしているのだ」というところでしょうか。

 僕が興味深いのは、この現状は二大政党制をめざした政治改革の失敗だという批判について、

 「私たちはふさわしい制度をいくつか作り上げたという自負はある。政党組織がうまく動かないのは、究極的に言えば、自分党的な体質が残っているからだ。個人後援会を含めて中選挙区時代に培われた体質が、政党の組織化にとって最大の障害物になっている」

 と述べられている点です。

 ちなみにこの指摘は、全面的に当たっていると思います。「自分党的体質」が政党政治を著しく歪めてきたことは事実だからです。例えば自民党の場合政党組織というのが地域に根を張っているわけではなく、実態は個人後援会の下部組織のような場合が多々見られます。自民党の場合極端でしょうが、大なり小なり党の看板ではない個人ブランドを確立している政治家が評価される風潮が一般的です。民主党の一部議員にはあえて後援会を作らず、政策とはさほど関わりのない親睦的活動をやらない人もいますが、ごく少数に過ぎません。

 さて政党政治が機能しない最大の障害物たる「自分党的体質」がなぜ残るのか。答えは簡単です。それを取り除かれたら居場所を失う政治家が少なくないからです。政策能力や見識とは違う次元で政治をやってきた者にとって、佐々木氏が指摘するような経営管理能力を持った政党組織が動き始めれば、自身がお払い箱になることなど火を見るより明らかです。ですから彼らはなんとかして家父長制的体質を守ろうとして、新しい芽を摘み取ることに精を出します。身を守ることを第一義とする者にとって、自らを乗り越えていく存在それ自体許されないからです。

 ちなみに、佐々木氏は中選挙区時代の体質が残存しているかのようにとらえられていますが、実態はこうした悪しき体質は小選挙区制になって強化されたと見るべきでしょう。

 小選挙区制導入には金のかかる選挙を是正していくという目的もあったはずでしたが、結果はまったく逆でした。これまで以上に金がかかることになり、さらに既成政党以外が参入しずらい制度設計にしてしまったがゆえに、むしろ「政治の不全」はいびつな選挙制度が温床になっている側面も指摘しなければなりません。

 中選挙区時代は一つの「自分党的体質」さえあれば、なんとか当選できたのに、小選挙区になるといくつもの「自分党的体質」と折り合いを良くしなければ当選がおぼつかないわけですから、政策や政治信条ではなく歪んだ義理人情が優先されることになるわけです。

 選挙区が中か小かなど実はなんら本質的ではありません。しがらみから脱することができない制度設計である限りどちらにせよなにも変わらないのです。根本は金と人手がかかる仕組みにあります。「金のかからない」ではなく「金をかけられない」制度にすればそれが、中でも小でも、問題は解決するでしょう。

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